睡眠薬の種類と違い:4つのタイプを比較表で整理【向精神薬の指定も】
医療機関で処方される睡眠薬は、作用の仕組みで4つのタイプに分けられます。オレキシン受容体拮抗薬、メラトニン受容体作動薬、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系です。 タイプによって、向精神薬に指定されているか、依存についてどんな注意が出ているか、オンライン診療の初診で扱えるかが変わります。このページでは添付文書と診療ガイドラインをもとに、優劣ではなく違いを整理します(2026年9月時点)。
4つのタイプの比較表
| タイプ | 主な成分(商品名) | 作用の仕組み | 向精神薬の指定 | 添付文書などに書かれている主な注意 |
|---|---|---|---|---|
| オレキシン受容体拮抗薬 | スボレキサント(ベルソムラ)、レンボレキサント(デエビゴ)、ダリドレキサント(クービビック)、ボルノレキサント(ボルズィ) | 覚醒を保つ物質オレキシンの働きを抑える | なし(習慣性医薬品) | 翌朝以降の眠気、悪夢、睡眠時麻痺(いわゆる金縛り)。一部の抗真菌薬・抗菌薬と併用できない薬がある |
| メラトニン受容体作動薬 | ラメルテオン(ロゼレム) | 体内時計にかかわるメラトニンの受容体を刺激する | なし | 効能は「入眠困難の改善」。フルボキサミンとは併用できない。プロラクチン上昇 |
| ベンゾジアゼピン系 | トリアゾラム(ハルシオン)、ブロチゾラム(レンドルミン)、フルニトラゼパム(サイレース)など | 脳の活動を抑えるGABAの働きを強める | 多くが指定(第二種・第三種)。リルマザホン(リスミー)は指定なし | 依存・離脱症状、ふらつき・転倒、服用後の健忘、もうろう状態 |
| 非ベンゾジアゼピン系 | ゾルピデム(マイスリー)、ゾピクロン(アモバン)、エスゾピクロン(ルネスタ) | 化学構造は異なるが、ベンゾジアゼピン系と同じ受容体に作用する | ゾルピデム・ゾピクロンは第三種。エスゾピクロンは指定なし | 依存・離脱症状、もうろう状態・夢遊症状、服用後の健忘、ふらつき |
向精神薬の指定と規制区分は、各製品の添付文書(PMDAの検索ページで閲覧できます)で確認した内容です。どのタイプにも共通して、添付文書には「翌朝以降に眠気や注意力の低下が起こることがあるため、自動車の運転など危険を伴う機械の操作をしないよう注意する」という趣旨の記載があります(記載の表現は製品によって異なります)。
オレキシン受容体拮抗薬
オレキシンは、脳が「起きている状態」を保つために働く物質です。このタイプは、オレキシンが受容体に結合するのを妨げることで、覚醒から睡眠への切り替えを促すと考えられています。
- 国内では2014年にスボレキサント、2020年にレンボレキサント、2024年にダリドレキサント、2025年にボルノレキサントが承認されています
- 効能はいずれも「不眠症」
- 添付文書には、傾眠(眠気)、頭痛、悪夢、睡眠時麻痺、めまいなどの副作用が記載されています
- 主にCYP3Aという酵素で代謝されるため、この酵素を強く妨げるお薬(イトラコナゾール、クラリスロマイシンなど)とは併用禁忌になっている製品があります。レンボレキサントは併用禁忌の設定はありませんが、併用時は減量することとされています
- ナルコレプシーのある方では症状を悪化させるおそれがあるとされています
向精神薬には指定されていませんが、添付文書の規制区分は習慣性医薬品です。「依存の心配がまったくない薬」という意味ではありません。 なお、2013年策定の診療ガイドラインにはこのタイプは含まれておらず、ほかのタイプとの位置づけは、ガイドライン上はまだ示されていません。
メラトニン受容体作動薬
メラトニンは、夜になると分泌が増え、体内時計を介して眠りの準備を促すホルモンです。ラメルテオンは、この受容体を刺激します。
- 効能は「不眠症における入眠困難の改善」に限られています
- 添付文書では、投与開始2週間後をめどに有効性を評価し、有用性が認められなければ中止を考慮することとされています
- 診療ガイドラインは、ふらつきや服用後の健忘が少ないことが知られている、としています
- 抗うつ薬のフルボキサミンとは併用禁忌です。高度な肝機能障害のある方は服用できません
- 向精神薬にも習慣性医薬品にも該当しません
2026年5月には、同じ成分を含む市販薬「ロゼレムS」(要指導医薬品)が承認され、同年7月に発売されました。薬剤師の説明を受けて購入するお薬で、効能は「一時的な不眠の寝つきの悪さ」、15歳以上が対象です。不眠が続いている場合に自己判断で使い続けるためのものではありません。
ベンゾジアゼピン系
脳の活動を抑えるGABAという物質の働きを強めることで、眠気をもたらします。不安をやわらげる作用、筋肉をゆるめる作用もあわせ持ちます。古くから使われ、種類が多いタイプです。
診療ガイドラインでは、血液中の濃度が半分になるまでの時間(半減期)によって、超短時間作用型(トリアゾラムなど)、短時間作用型(ブロチゾラムなど)、中間作用型(フルニトラゼパムなど)、長時間作用型に分けています。寝つきが悪いのか、途中で目が覚めるのかによって使い分けられてきました。
注意点として、添付文書とPMDAの注意喚起には次の内容が書かれています。
- 依存:承認用量の範囲内でも、漫然と長期間服用すると身体依存が生じることがある
- 離脱症状:急な減量・中止で、不眠、不安、焦燥感、頭痛、吐き気、せん妄、ふるえ、けいれん発作などがあらわれることがある。自己判断で中止・減量しない
- ふらつき・転倒、服用後の出来事を覚えていない(前向性健忘)、もうろう状態
- 急性閉塞隅角緑内障、重症筋無力症の方は服用できない
非ベンゾジアゼピン系
化学構造はベンゾジアゼピンと異なりますが、同じ受容体に作用します。頭文字から「Z薬」とも呼ばれます。いずれも超短時間作用型です。
診療ガイドラインは、ベンゾジアゼピン系と比べて短期的な効果に大きな差はなく、副作用の頻度は低いが、ふらつきにはなお留意が必要としています。 一方で、PMDAは依存性の注意喚起で、ゾルピデム・ゾピクロン・エスゾピクロンをベンゾジアゼピン系とまとめて「ベンゾジアゼピン受容体作動薬」として扱っています。添付文書の冒頭には、服用後のもうろう状態や夢遊症状、健忘についての警告があります。「非」という名前から「別物で依存しない」と受け取るのは誤りです。
向精神薬の指定と、オンライン診療の初診で扱えるか
指定されている薬・いない薬
「向精神薬」は、麻薬及び向精神薬取締法で指定された物質のことで、睡眠薬全般を指す言葉ではありません。乱用や依存のおそれがあるものが第一種から第三種に分けて指定され、譲り渡しなどが規制されています。
- 指定あり:フルニトラゼパム(第二種)、トリアゾラム・ブロチゾラム・ゾルピデム・ゾピクロンなど(第三種)。ゾピクロンは2016年10月に新たに指定されました
- 指定なし:オレキシン受容体拮抗薬の4成分、ラメルテオン、エスゾピクロン、リルマザホン
「指定なし」は法律上の区分であり、注意がいらないという意味ではありません。エスゾピクロンとリルマザホンは、PMDAの依存性に関する注意喚起の対象に含まれています。
オンライン診療の初診のルール
厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」は、初診のオンライン診療で次の処方を行わないこととしています。
- 麻薬および向精神薬の処方
- 基礎疾患などの情報が把握できていない患者への、8日分以上の処方
このため、向精神薬に指定されている睡眠薬は初診のオンライン診療では処方されず、対象になりうるのは指定のないお薬で、日数は原則7日分までです。 また同じ指針は、患者が睡眠薬など特定のお薬の処方を希望し、不適正使用が疑われるのに、オンライン診療だけで十分に評価せず処方することを「不適切な例」に挙げています。「オンラインなら希望の薬が出る」わけではありません。
どのタイプになるかは何で決まるか
お薬は医師が診察で決めます。判断の材料になるのは、たとえば次の点です。
- 不眠のタイプ:寝つけないのか、途中や早朝に目が覚めるのか
- 年齢と転倒のリスク:診療ガイドラインは、高齢者ではベンゾジアゼピン系が転倒・骨折のリスクを高めるため推奨されないとしています
- 肝臓の働き:重度の肝機能障害では使えないお薬が複数あります
- 飲んでいるほかのお薬:抗真菌薬、一部の抗菌薬、抗うつ薬などとの飲み合わせ
- 翌日の運転や危険な作業の有無
- 妊娠・授乳、いびき・無呼吸の有無、お酒の量(診療ガイドラインは、睡眠薬とアルコールの併用を原則禁忌としています)
診療ガイドラインは、睡眠薬は1種類で使うことを原則とし、症状がよくなれば減量・休薬を目指すとしています。また、お薬だけでなく生活習慣の見直し(睡眠衛生指導)や、不眠症に対する認知行動療法も治療の選択肢です。
まとめ
- 処方される睡眠薬は、オレキシン受容体拮抗薬/メラトニン受容体作動薬/ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の4タイプ
- 向精神薬に指定されているのは、ベンゾジアゼピン系の多くと、ゾルピデム・ゾピクロン。指定のないお薬にも、それぞれ添付文書上の注意がある
- ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系は、承認用量でも長期の服用で依存が生じることがある。自己判断で急にやめない
- 初診のオンライン診療では向精神薬は処方されず、日数は原則7日分まで
- どのタイプが合うかは、不眠のタイプ、年齢、肝臓の働き、併用薬、運転の有無などをふまえて診察で決まる
当院でのご相談について
当院(渋谷駅まちかどクリニック)は、建物に看板を出していない一室で、完全予約制・お一人ずつ不眠のご相談をお受けしています。来院が難しい場合はオンライン診療も行っています。健康保険を使わない自由診療のため費用は全額自己負担で、保険診療より高くなります。向精神薬に該当するお薬はオンライン診療ではお出ししておらず、オンライン初診のお薬は7日分までです。特定のお薬を指定してのご希望にはお応えできない場合があり、診察の結果、お薬をお出ししないことや、対面の医療機関の受診をお願いすることがあります。
LINEで相談するよくある質問
睡眠薬にはどんな種類がありますか。
医療機関で主に処方されるのは、オレキシン受容体拮抗薬、メラトニン受容体作動薬、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系の4タイプです。作用の仕組みと、添付文書に書かれている注意点がそれぞれ異なります。
睡眠薬と睡眠導入剤は違うものですか。
医学的な区別はなく、どちらも不眠症の治療薬を指す呼び方です。一般には作用時間の短いものを睡眠導入剤と呼ぶことが多いものの、分類上は同じお薬です。
依存性がない睡眠薬はありますか。
「依存性がない」と言い切れるお薬はありません。オレキシン受容体拮抗薬は向精神薬には指定されていませんが、添付文書上は習慣性医薬品に区分されています。ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系は、承認用量の範囲内でも長期の服用で依存が生じることがあるとPMDAが注意喚起しています。
オンライン診療の初診で処方される睡眠薬はどれですか。
厚生労働省の指針で、初診のオンライン診療では麻薬・向精神薬を処方しないことになっています。そのため対象になりうるのは向精神薬に指定されていないお薬ですが、どれを使うか、そもそも処方するかは診察で決まります。
市販の睡眠改善薬は処方薬と同じですか。
多くの市販薬は抗ヒスタミン薬の眠気を利用したもので、処方薬とは成分が異なり、一時的な不眠への短期間の使用に限られます。2026年7月にはラメルテオンを含む要指導医薬品も発売されましたが、これも効能は一時的な不眠の寝つきの悪さです。
参考にした情報
- 2024年 福井大学医学部 卒業
- 2024年 医師免許取得
- 都内の大学病院に勤務
- 2026年 当院を開業
- 認定産業医
この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の診断や治療の指示ではありません。症状がある場合は医療機関にご相談ください。