夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)の原因と対処・受診の目安
夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」は、年齢とともにだれにでも増える現象です。一方で、睡眠時無呼吸、夜間頻尿、うつ病など、治療の対象になる原因が隠れていることもあります。 受診の分かれ目は、目が覚める回数ではなく、日中に支障が出ているかと、原因となる病気のサインがあるかの2点です。
まず結論:回数よりも「日中の支障」と「病気のサイン」
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、不眠症と診断されるのは、夜の不眠が続き、かつ日中に心身の不調を自覚して生活の質が下がっている場合です。眠りが浅く感じられても、昼間の生活に支障がなければ不眠症とは診断されず、「目覚めの回数にこだわりすぎないことが大事」とされています。
そのうえで、次のように考えると整理しやすくなります。
- 病気のサインがある(大きないびき、呼吸が止まる、脚のむずむず、トイレの回数が増えた、気分の落ち込み、痛み)→ その原因に合った科へ
- サインはないが、週に3日以上目が覚めて日中つらい状態が続いている → 医療機関で不眠の相談を(3か月以上続くと慢性不眠症と診断されることがあります)
- 目が覚めてもまた眠れて、日中は困っていない → 年齢相応の変化の可能性が高く、下の生活面の見直しから
中途覚醒の主な原因と見分け方(一覧表)
| 原因 | 目の覚め方の特徴・手がかり | まず相談する先 |
|---|---|---|
| 加齢 | 年齢とともに少しずつ増える。物音や軽い尿意で目が覚める。早寝で寝床にいる時間が長い | 日中に支障がなければ生活の見直しから |
| 飲酒 | 寝つきはよいが、睡眠の後半に目が覚める。飲んだ日に多い | まず量と時間の見直し。やめられないときは内科・精神科 |
| 夜間頻尿 | 尿意で目が覚める。昼もトイレが近い、または夜だけ尿量が多い | 泌尿器科・内科 |
| 睡眠時無呼吸 | 大きないびき、呼吸が止まると指摘される。日中の強い眠気、熟睡感がない | 睡眠外来・呼吸器内科・耳鼻咽喉科 |
| むずむず脚症候群・周期性四肢運動障害 | 夕方から夜に脚の不快感があり、動かすと楽になる。睡眠中に脚がぴくつくと言われる | 脳神経内科・睡眠外来 |
| うつ病など、こころの病気 | 気分の落ち込み、興味や意欲の低下、食欲の変化を伴う。朝早く目が覚めることも多い | 精神科・心療内科 |
| 薬・カフェイン・ニコチン | 新しい薬を飲み始めてから眠りが変わった。夕方以降のコーヒーやお茶、たばこ | 処方した医師・薬剤師 |
| 痛み・かゆみ・咳・息苦しさ | 体の症状で目が覚める | その症状を診ている科、または内科 |
原因は1つとは限りません。「お酒を飲む+いびきをかく」「トイレが近い+寝床にいる時間が長い」のように重なっていることが多く、当てはまるものを1つずつ確かめていくことになります。
原因ごとの補足
加齢:深い睡眠が減り、眠れる時間も短くなる
e-ヘルスネットによると、脳波で測った実質的な睡眠時間は、20代で約7時間、40代で約6.5時間、60代で約6時間と、年齢とともに短くなります。深いノンレム睡眠が減るため、物音や軽い尿意で睡眠が中断されやすくなります。健康な方にも起こる変化で、60歳以上では半数以上に何らかの不眠症状があるとされています。これらは平均値で、起きたときに休めた感覚があれば、平均と比べて心配する必要はないとされています。
飲酒:寝つきはよくなるが、後半の眠りが悪くなる
睡眠ガイド2023によると、アルコールは一時的に寝つきを促しますが、睡眠後半の眠りの質を大きく悪化させ、飲酒量が増えるほど中途覚醒の回数が増えることが報告されています。同ガイドは「晩酌は控えめにし、寝酒はしない」ことを勧め、寝酒の原因となる不眠がある場合は医師に相談するよう書いています。
夜間頻尿:原因は3つに分けられる
日本泌尿器科学会は、夜間に排尿のために1回以上起きなければならない症状を夜間頻尿と呼び、原因を次の3つに分けています。
- 尿の量が多い(多尿・夜間多尿):水分のとりすぎ、糖尿病、高血圧、心不全、腎機能障害、睡眠時無呼吸など
- 膀胱にためられる量が減っている:過活動膀胱、前立腺肥大症など
- 眠りが浅い:目が覚めるたびに気になってトイレに行く
つまり「トイレで目が覚める」のか「目が覚めたからトイレに行く」のかで、対処が変わります。朝起きてから翌朝まで、排尿した時刻と量を記録する「排尿日誌」が見分ける助けになるとされています。内科の病気が隠れていることがあるため、回数が増えて困っている場合は泌尿器科か内科に相談してください。
睡眠時無呼吸:不眠症と見誤られることがある
閉塞性睡眠時無呼吸では、睡眠中に気道がふさがって呼吸が止まり、そのたびに覚醒反応が起きるため、頻回の中途覚醒につながります。睡眠ガイド2023は、この病気が「中途覚醒型の不眠症と誤認されることがある」と指摘しています。 最大の危険因子は肥満ですが、あごが小さいなどの骨格が原因になることもあり、やせていても否定はできません。ご本人は気づきにくいため、家族にいびきや無呼吸を指摘されたことがあれば、睡眠薬の相談よりも先に検査を受けてください。同ガイドは、治療をしていない閉塞性睡眠時無呼吸では、アルコールやベンゾジアゼピン受容体作動薬に分類される睡眠薬が無呼吸を悪化させる可能性があるとしています。
むずむず脚症候群・周期性四肢運動障害
むずむず脚症候群は、夕方から夜に脚の不快な感覚が強くなり、動かさずにいられなくなる病気で、主に寝つきを妨げます。周期性四肢運動障害は、睡眠中に脚の筋肉のぴくつきがくり返し起こって中途覚醒が増える病気で、ご本人に自覚が乏しいのが特徴です。カフェイン、アルコール、ニコチンはむずむず脚症候群を悪化させる可能性があるとされています。
うつ病など、こころの病気
e-ヘルスネットは「単なる不眠だと思っていたら実はうつ病だったというケースも少なくありません」と注意を促しています。不眠に加えて、気分の落ち込み、何事もおっくうに感じる、趣味が手につかないといった状態が続く場合は、不眠だけを治そうとせず、早めに精神科・心療内科に相談してください。厚生労働省の「こころの耳」では、憂うつな気分や楽しめない状態が2週間以上続くことが、うつ病の目安として説明されています。
薬や刺激物
e-ヘルスネットは、睡眠を妨げることがある薬として降圧薬、甲状腺の薬、抗がん剤などを挙げています。思い当たる場合も、自己判断で薬をやめず、処方した医師か薬剤師に相談してください。カフェインには覚醒作用に加えて利尿作用もあります。
受診の分かれ目
早めに受診したほうがよい場合
- 大きないびき、睡眠中の無呼吸を指摘されている。日中に強い眠気がある(特に運転や危険を伴う作業をする方)
- 脚のむずむず感、睡眠中の脚のぴくつきがある
- 夜間のトイレの回数が急に増えた。のどが渇いて水分を多くとる、昼も頻尿がある
- 気分の落ち込みや、何をしても楽しめない状態が2週間以上続いている
- 週に3日以上目が覚め、日中のだるさ・眠気・集中力の低下で仕事や生活に支障が出ている
- 痛み、かゆみ、咳で目が覚める
すぐに受診が必要な場合
- 胸の痛みや強い息苦しさで目が覚める、横になると息苦しく、体を起こすと楽になる → 夜間でも救急の受診を検討してください
- 「消えてしまいたい」「死んだほうが楽だ」という気持ちがある → 下の相談窓口か、精神科・心療内科へ
#いのちSOS:0120-061-338(24時間)/よりそいホットライン:0120-279-338(24時間)
様子を見てよい範囲
- 目が覚めても比較的すぐ眠れ、日中は困っていない
- 心配事、旅行、環境の変化などきっかけがはっきりしている。こうした不眠は、通常は数日から数週間のうちに眠れるようになるとされています
自分でできる対処(睡眠ガイド2023の範囲で)
- 寝酒をしない、晩酌は控えめにする
- カフェインは1日400mgまで(ドリップコーヒーでカップ4杯、約700ccが目安)。夕方以降は控える
- 塩分を控える。日中にとった食塩の過剰分は睡眠中に排泄されるため、夜間の排尿回数が増えるとされています。寝る前の水分のとりすぎにも注意します
- 寝室はできるだけ暗く、静かに、暑すぎず寒すぎない温度にする。寝ている間は弱い光でも中途覚醒の時間が増えることが報告されています。夜中にトイレに行くときは足元灯などを使い、強い光を目に入れないようにします
- スマートフォンやタブレットを寝室に持ち込まない
- 日中は活動的に過ごし、長い昼寝を避ける
持病で水分や塩分の指示を受けている方は、主治医の指示を優先してください。原因となる病気がある場合はその治療が先で、ガイドも、実践しても改善しない場合は医師に相談するよう勧めています。
寝床にいる時間(床上時間)を短くする考え方
見落とされやすいのが、眠れる時間より長く寝床にいることです。e-ヘルスネットによると、60代以降は実際に眠れる時間が短くなるのに、早く寝床に入るため、寝床にいる時間は逆に長くなっています。眠れないまま寝床で過ごす時間が長いと睡眠の満足感が下がり、寝床で過ごすこと自体への緊張が高まって、不眠が悪化することが分かっています。
睡眠ガイド2023に示されている目安は次のとおりです。
- まず1週間、寝床に入っていた時間と実際に眠っていた時間を分けて記録する
- 寝床にいる時間の目安は、1週間の平均睡眠時間+30分程度。8時間以上にならないようにする
- 眠くなってから寝床に入る。早く寝床に入りすぎない
- なかなか眠れないときは、いったん寝床を離れ、静かで暗めの場所で眠気が来るまで過ごしてから戻る
- 自分で短くする場合は、6時間を限度にする
たとえば、夜9時に寝床に入って朝6時に起きる(9時間)方が、実際に眠れているのは6時間ほどという場合、寝床に入る時刻を夜11時半ごろに遅らせると、眠りがまとまりやすくなるという考え方です。
日中の眠気が強くなる、夜中にトイレへ起きたときにふらつくなど、転倒が心配な方や持病のある方は、自分だけで調整せず医師にご相談ください。
寝床での過ごし方や睡眠の習慣を見直す方法は、医療機関では「不眠の認知行動療法」として行われています。診療ガイドラインでは、合計4〜8回のカウンセリングで、寝つきの悪さや夜間の中途覚醒といった不眠症状が改善することが明らかになっているとされています。ただし、睡眠時無呼吸など別の原因がある場合は、これだけでは解決しません。必要な睡眠時間には個人差があることにも注意が必要です。
まとめ
- 中途覚醒は年齢とともに増える。目が覚める回数ではなく、日中に支障があるかが受診の分かれ目
- いびき・無呼吸、脚のむずむず、夜間頻尿、気分の落ち込み、痛みがあれば、不眠の相談より先に、その原因に合った科へ
- 寝酒は睡眠後半の中途覚醒を増やす。カフェイン、塩分、寝室の光・音・温度も見直す
- 寝床にいる時間は平均睡眠時間+30分程度が目安。眠れないときはいったん寝床を離れる
- 睡眠時無呼吸などは通常の睡眠薬では治らず、悪化することもある。まず原因を調べる
当院でのご相談について
当院(渋谷駅まちかどクリニック)は、渋谷駅から徒歩4分、建物に看板を出していないマンションの一室で、完全予約制・お一人ずつ診療しています。健康保険を使わない自由診療のため、費用は全額自己負担です。来院が難しい場合はオンライン診療も行っています(オンライン初診のお薬は7日分まで)。向精神薬に該当するお薬はお出ししていません。夜間頻尿やうつ病など、原因となる病気の治療が必要と考えられる場合は、健康保険が使える専門の医療機関の受診をお勧めすることがあります。
LINEで相談するよくある質問
夜中に何回目が覚めたら病気ですか。
回数で決まる基準はありません。不眠症と診断されるのは、夜の不眠が続き、そのために日中のだるさや集中力の低下などの不調が出ている場合です。目が覚めてもまた眠れて日中に支障がなければ、e-ヘルスネットでも不眠症とは診断されないと説明されています。
毎晩同じ時間に目が覚めるのはなぜですか。
寝酒や晩酌の深酒では、睡眠の後半に眠りが浅くなって目が覚めやすくなることが報告されています。トイレ、室温、明け方の光や物音など、決まった時間帯に起こる刺激が関係していることもあります。1〜2週間、目が覚めた時刻と前日の飲酒・水分・カフェインを記録すると手がかりになります。
夜中に目が覚めたとき、眠れなくても横になっていたほうがよいですか。
厚生労働省の睡眠ガイド2023では、なかなか眠れないときはいったん寝床を離れ、静かで暗めの場所で眠気が来るまで過ごし、眠くなってから寝床に戻ることが勧められています。眠れないまま寝床で過ごす時間が長いと、不眠が悪化することが分かっています。
中途覚醒は何科に相談すればよいですか。
原因によって変わります。いびきや無呼吸を指摘されていれば睡眠外来や呼吸器内科、トイレで起きるなら泌尿器科や内科、気分の落ち込みを伴うなら精神科・心療内科です。原因の見当がつかない場合は、かかりつけの内科で相談すると必要な科につないでもらえます。
睡眠薬を飲めば夜中に目が覚めなくなりますか。
原因によります。睡眠時無呼吸やむずむず脚症候群などは、通常の睡眠薬では治らないばかりか、症状が悪化することもあるとされています。まず原因を調べることが先で、お薬を使うかどうかは診察で決まります。
参考にした情報
- 2024年 福井大学医学部 卒業
- 2024年 医師免許取得
- 都内の大学病院に勤務
- 2026年 当院を開業
- 認定産業医
この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の診断や治療の指示ではありません。症状がある場合は医療機関にご相談ください。