朝早く目が覚める(早朝覚醒)の原因:年齢・体内時計・うつ病との関係
朝早く目が覚めてしまい、そのあと眠れない「早朝覚醒」。年齢とともに増える症状で、背景には体内時計が前倒しになるという、健康な方にも起こる変化があります。 一方で、早朝覚醒はうつ病で比較的早い時期からみられる症状でもあります。見分ける手がかりは、朝の気分と日中の生活への支障です。
まず結論:「早く目が覚める」だけなら、病気とは限らない
厚生労働省の「こころの耳」は、早朝覚醒を「朝早く目覚め、再度眠ることができない状態」とし、週の半分以上でそれが起こり、不快を伴うときに症状としてとらえると説明しています。e-ヘルスネットも、不眠症で問題になるのは不眠そのものではなく「日中に不調が出現する」ことだとしています。
次の順で考えると整理しやすくなります。
- 朝の憂うつ、興味や意欲の低下がある → 年齢のせいと決めつけず、精神科・心療内科へ
- 気分は変わりないが、早く目が覚めて日中つらい → 寝床に入る時刻、光、お酒を見直す。変わらなければ医療機関へ
- 早く目が覚めるが、日中は元気に過ごせている → 年齢相応の変化の可能性が高く、無理に長く眠ろうとしなくてよい
原因ごとの見分け方(一覧表)
| 原因 | 特徴・手がかり | 次の一歩 |
|---|---|---|
| 年齢による変化 | 夜の早い時間に眠くなり、早く寝床に入っている。合計の睡眠時間は年齢相応。気分は普段どおり | 寝床に入る時刻を遅らせる。寝床にいる時間を見直す |
| 睡眠・覚醒相前進障害 | 極端な早寝早起きで、夕食後の団らんや仕事に支障が出るほど。家族に同じ傾向の人がいることもある | 睡眠外来など専門の医療機関へ |
| うつ病 | 早く目が覚めて、否定的な考えごとが止まらない。朝の気分が憂うつ。以前のように楽しめない、何事もおっくう | 精神科・心療内科へ。つらい気持ちが強いときは相談窓口へ |
| 飲酒 | 寝酒や深酒をした日に早く目が覚める | 寝酒をやめる。やめられないときは医師に相談 |
| 寝室の環境 | 明け方の光、物音、夏の暑さで目が覚める | 遮光や室温の調整 |
| 体の症状・ほかの睡眠障害 | 尿意、痛み、いびき・無呼吸など | その原因に合った科へ |
複数が重なっていることも少なくありません。また、この表は目安で、ご自身だけでうつ病かどうかを見分けることはできません。迷う場合は受診してください。
年齢・体内時計・うつ病については次の章から詳しく説明します。それ以外の原因について補足します。
- お酒:e-ヘルスネットによると、寝酒は寝つきがよくなるように思えても効果は短時間で、飲酒後は深い睡眠が減り、早朝覚醒が増えるとされています
- 寝室の環境:睡眠ガイド2023によると、夏は日が長いことや寝室の高温・多湿のために、ほかの季節より眠りを保ちにくくなります。寝ている間は弱い光でも目が覚めている時間が増えることが報告されており、遮光カーテンや室温の調整が役立つことがあります
- 体の症状、ほかの睡眠障害:尿意、痛み、睡眠時無呼吸などが明け方の覚醒につながることがあります。いびきや無呼吸を指摘されている場合は、検査を受けてください
年齢による変化:眠れる時間が短くなり、リズムが前倒しになる
e-ヘルスネットによると、年齢による睡眠の変化には2つの面があります。
1つ目は、実際に眠れる時間が短くなることです。脳波で測った睡眠時間は、20代で約7時間、40代で約6.5時間、60代で約6時間、70代以降は6時間以下になります。これは平均値で、必要な睡眠時間には3時間以上の個人差があるとされています。
2つ目は、体のリズム全体が前倒しになることです。高齢になると早寝早起きになりますが、これは睡眠だけでなく、血圧、体温、ホルモン分泌など、睡眠を支える体のリズムが前倒しになるためと説明されています。
この2つが重なると、何が起こるでしょうか。たとえば夜9時に寝床に入り、眠れる時間が6時間であれば、午前3時ごろに目が覚めるのは自然な結果です。e-ヘルスネットに紹介されている調査でも、60代以降は寝床に入る時刻が大きく早まる一方、起きる時刻はあまり変わらず、寝床にいる時間が長くなっていました。早く目が覚めても寝床にとどまっているためです。
つまり、年齢による早朝覚醒の多くは、「眠れなくなった」のではなく、眠れる時間に対して、寝床に入る時刻が早すぎる状態と考えることができます。e-ヘルスネットは「若い頃はもっと眠れたのに」と比べることは禁物としています。睡眠薬で若いころの睡眠時間に戻す、という性質のものではありません。
なお、年齢による変化は何年もかけて少しずつ進むものです。働く世代の方で、ここ数週間から数か月のうちに急に早く目が覚めるようになった場合は、年齢だけでは説明しにくいため、気分の変化、お酒の量、生活リズムの変化を振り返ってみてください。
体内時計と光:朝の光が逆効果になることがある
体内時計は光で毎日合わせ直されている
e-ヘルスネットによると、人の体内時計の周期は平均で24時間10分前後と、24時間より少し長くなっています。このずれを毎日合わせ直しているのが光です。
- 明け方から昼ごろに光を浴びる → 体内時計は朝型(早寝早起き)の方向に動く
- 夕方から深夜に光を浴びる → 体内時計は夜型(遅寝遅起き)の方向に動く
早朝覚醒と光の関係
睡眠の情報では「朝起きたら日光を浴びましょう」とよく勧められます。寝つきが悪い方、朝起きられない方には理にかなった方法です。 しかし、早朝覚醒で困っている方が早朝に強い光を浴びると、体内時計がさらに前倒しになる可能性があります。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」も、夕方に眠気が来るのが早くて困っている高齢の方について、早朝に日光を浴びるとさらに朝型を強める可能性があり注意が必要、としています。
光の浴び方を調整する方法は、うつ病など別の原因がないかを確かめたうえで、医師と相談しながら行うものです。朝の気分の落ち込みがある方は、まず次の「うつ病との関係」を確認してください。
睡眠・覚醒相前進障害という病気
極端な早寝早起きになり、夕方以降の早い時刻から強い眠気が出て、早朝に目が覚めてしまう病気です。高齢の方に多く、早朝覚醒のために不眠症と見誤られることがあるとされています。遺伝する家系があり、時計遺伝子の変異が見つかっていることも報告されています。治療には専門的な知識が必要とされており、疑われる場合は睡眠障害を専門とする医療機関に相談してください。
うつ病との関係:年齢のせいと決めつけない
「こころの耳」は、早朝覚醒について「特にうつ病では比較的早期からみられる症状」で、「朝の気分が憂鬱であれば、その可能性があるので注意が必要」と説明しています。また、うつ病は気分の変化を自分では自覚しにくいため、自覚しやすい睡眠の変化に注目する考え方を紹介しており、その例として「朝いつもより早く目が覚めてネガティブな考えごとをする」ことを挙げています。
うつ病を考える手がかり(チェックリスト)
早朝覚醒に加えて、次のような状態が2週間以上続いている場合は、早めに精神科・心療内科に相談してください。
- 以前は楽しめていたことが楽しめない、喜びを感じない
- 良いことがあっても気分が晴れない
- 朝の気分が特に憂うつである
- 早く目が覚めたあと、否定的な考えごとがくり返し浮かぶ
- 何事もおっくうで、趣味が手につかない
- 仕事や家事がこれまでどおりにできない
これは診断のための検査ではなく、受診を考える目安です。すべて当てはまらなくても、つらさが続いていれば相談してかまいません。e-ヘルスネットも、「単なる不眠だと思っていたら実はうつ病だった」というケースは少なくないとしています。こころの病気が背景にある場合は、不眠だけに対処しても十分に改善しないことが多いとされています。
つらい気持ちが強いとき
「消えてしまいたい」「死んだほうが楽だ」という気持ちがある場合は、不眠の相談よりも先に、相談窓口や精神科・心療内科に連絡してください。
- #いのちSOS:0120-061-338(24時間)
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間)
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」に、電話・SNSの相談窓口がまとまっています
受診の目安
早めに受診したほうがよい場合
- 上のチェックリストに当てはまる状態が2週間以上続いている → 精神科・心療内科
- 週の半分以上で早く目が覚め、日中のだるさ・眠気・集中力の低下で生活に支障が出ている状態が続いている → かかりつけの内科、精神科・心療内科
- 夕方の早い時間から起きていられず、仕事や家族との生活に支障がある → 睡眠外来など専門の医療機関
- 大きないびき、無呼吸を指摘されている → 睡眠外来・呼吸器内科
様子を見てよい範囲
- 早く目が覚めるが、気分は普段どおりで、日中も元気に過ごせている
- 心配事や環境の変化など、きっかけがはっきりしていて、数日から数週間のうちに戻ってきている
自分でできる対処
- 寝床に入る時刻を遅らせる。「やることがないから寝床に入る」のではなく、眠くなってから寝床に向かいます
- 寝床にいる時間を見直す。睡眠ガイド2023の目安は、1週間の平均睡眠時間+30分程度で、8時間以上にならないようにします。自分で短くする場合は6時間を限度にします
- 日中は活動的に過ごし、長い昼寝を避ける
- 寝酒をしない
- 目が覚めて眠れないときは、寝床で考えごとを続けない。いったん寝床を離れ、静かな場所で過ごします
これらを続けても変わらない場合や、日中の支障が大きい場合は、医療機関に相談してください。
まとめ
- 年齢とともに増える早朝覚醒の背景は、体内時計の前倒しと、眠れる時間に対して寝床に入るのが早すぎること
- うつ病では早い時期から早朝覚醒がみられる。朝の憂うつ、楽しめない状態が2週間以上続くなら、年齢のせいと決めつけず精神科・心療内科へ
- 早朝覚醒で困っている場合、早朝の光はリズムをさらに前倒しにする可能性がある。一般的な「朝の光を浴びる」とは逆になる
- 早く目が覚めても日中に支障がなければ、無理に長く眠ろうとしなくてよい
- つらい気持ちが強いときは、#いのちSOS(0120-061-338)、よりそいホットライン(0120-279-338)へ
当院でのご相談について
当院(渋谷駅まちかどクリニック)は、渋谷駅から徒歩4分、建物に看板を出していないマンションの一室で、完全予約制・お一人ずつ診療しています。健康保険を使わない自由診療のため、費用は全額自己負担です。来院が難しい場合はオンライン診療も行っています(オンライン初診のお薬は7日分まで)。向精神薬に該当するお薬はお出ししていません。気分の落ち込みが強い場合など、診察の結果、精神科・心療内科など対面の専門の医療機関の受診をお願いすることがあります。
LINEで相談するよくある質問
朝4時や5時に目が覚めてしまうのは病気ですか。
時刻だけでは決まりません。年齢とともに体内時計が前倒しになり、早寝早起きになるのは健康な方にも起こる変化です。早く目が覚めても日中に支障がなければ、不眠症とは診断されません。気分の落ち込みを伴う場合や、日中の生活に支障がある場合は受診を考えてください。
早朝覚醒はうつ病のサインですか。
そのこともあります。厚生労働省の「こころの耳」では、早朝覚醒はうつ病で比較的早い時期からみられる症状で、朝の気分が憂うつであればその可能性があると説明されています。ただし早朝覚醒があるだけでうつ病とは言えず、判断には診察が必要です。
朝早く目が覚めたら、そのまま起きてしまってよいですか。
眠れないまま寝床で過ごす時間が長いと、不眠が悪化することが分かっています。厚生労働省の睡眠ガイド2023では、なかなか眠れないときはいったん寝床を離れることが勧められています。早く起きる分、夜に寝床に入る時刻を遅らせて、寝床にいる時間が長くなりすぎないようにします。
朝の光を浴びるとよいと聞きますが、早朝覚醒にもよいのですか。
逆効果になることがあります。朝の光は体内時計を早寝早起きの方向に動かすため、睡眠ガイド2023は、夕方の早い時間に眠くなって困っている高齢の方が早朝に日光を浴びると、さらに朝型が強まる可能性があると注意しています。ただし、早朝覚醒はうつ病のサインのこともあるため、光の浴び方を自己判断で変える前に、医療機関にご相談ください。
参考にした情報
- 2024年 福井大学医学部 卒業
- 2024年 医師免許取得
- 都内の大学病院に勤務
- 2026年 当院を開業
- 認定産業医
この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の診断や治療の指示ではありません。症状がある場合は医療機関にご相談ください。