EDは何科に行く?受診の流れ・薬の種類・飲み合わせの注意
EDの相談先は泌尿器科が基本です。ただし、かかりつけの内科などでも相談でき、診察の結果、飲み薬(PDE5阻害薬)が処方されることがあります。 一つだけ先に知っておいてほしいのは、狭心症などで硝酸薬を使っている方は、ED治療薬を飲めないということです。このページでは、科の選び方、受診の流れ、3種類の薬の違い、飲み合わせの注意を整理します。
EDは何科に行けばよいか
日本性機能学会と日本泌尿器科学会の「ED診療ガイドライン[第3版]」は、性機能を専門としない一般の医師を対象に作られています。つまり、EDの最初の相談は泌尿器科に限られません。状況ごとの相談先は次のとおりです。
| 状況 | 向いている相談先 |
|---|---|
| EDだけが気になる。持病はない | 泌尿器科、またはED診療を行っている内科・クリニック |
| 高血圧・糖尿病・脂質異常症などで通院している | まず通院先の主治医(内科) |
| 狭心症・心筋梗塞・不整脈などで通院している | 循環器内科の主治医。ED治療薬を使ってよいかの判断が必要 |
| 排尿の症状、陰茎の変形や痛みがある | 泌尿器科 |
| 気分の落ち込み・強い不安が続いている | 心療内科・精神科にも相談 |
| 前立腺や骨盤の手術のあとに起きた | 手術を受けた科(泌尿器科など) |
迷う場合は、今通っている医療機関で「EDのことも相談したい」と伝えるのが近道です。飲んでいるお薬を把握している医師のほうが、飲み合わせを確実に確認できます。
EDとは:定義と受診を考える目安
ガイドラインでは、EDを「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態が持続または再発すること」と定義しています。まったく勃起しない状態だけを指すのではありません。
- 途中で維持できないことがくり返し起きている
- それが続いていて、本人やパートナーが困っている
この2点がそろえば、相談してよい状態です。一度うまくいかなかっただけで、EDと診断されるわけではありません。 降圧薬や抗うつ薬など、服用中のお薬が関係することもあります。その場合も自己判断で中止せず、処方した医師に相談してください。
受診の流れ:何を聞かれ、何を調べるか
医療機関によって異なりますが、ガイドラインが示す基本の評価は次のとおりです。
- 問診:いつから、どんな場面で起きるか。朝の勃起の有無、性欲や射精の状態、ストレスや気分の状態。質問票(SHIMなど)を使うことがあります
- 持病とお薬の確認:心臓・血圧・糖尿病の治療状況、服用中のすべてのお薬。ここで硝酸薬の有無を必ず確認します
- 診察・検査:血圧測定、必要に応じて血糖値やテストステロン(男性ホルモン、午前中に採血)など
- 治療方針の相談:生活習慣の見直し、原因となる病気やお薬の調整、ED治療薬の処方
- 再診:効果と副作用の確認
受診前に「飲んでいる薬の一覧(お薬手帳)」と「直近の健康診断の結果」を用意しておくと、飲み合わせや持病の確認が早く進みます。
費用と保険
加齢や生活習慣などによる一般的なEDの治療は、公的医療保険の対象外で、診察料・薬代とも全額自己負担です。例外として、勃起不全による男性不妊の治療(タイミング法)で、厚生労働省の通知(2022年3月25日)に定められた要件を満たす場合に限り、バイアグラとシアリスは保険給付の対象になると添付文書に記載されています(2026年9月時点)。 なお、EDの背景にある高血圧や糖尿病などの検査・治療は、保険診療で受けられます。費用を抑えたい場合は、持病の通院先でまず相談する方法があります。
ED治療薬(PDE5阻害薬)3種類の違い
国内で処方できる飲み薬は、シルデナフィル・バルデナフィル・タダラフィルの3種類で、ガイドラインでは第一選択の治療とされています。いずれも性的な刺激があったときの勃起を助けるお薬で、添付文書には「催淫剤又は性欲増進剤ではない」と明記されています。 次の表は、各添付文書の記載をまとめたものです。
| 項目 | シルデナフィル | バルデナフィル | タダラフィル |
|---|---|---|---|
| 主な製品名 | バイアグラ(後発品あり) | 先発品はレビトラ。2026年9月時点でPMDAに掲載されているのは後発品 | シアリス(後発品あり) |
| 通常の用法 | 25〜50mgを性行為の約1時間前 | 10mgを性行為の約1時間前 | 10mgを性行為の約1時間前 |
| 血中濃度がピークになるまでの時間 | 約0.8〜1.2時間(空腹時) | 約0.75時間(空腹時) | 約3時間(0.5〜4時間の幅) |
| 血中濃度の半減期 | 約2〜3時間 | 約3〜5時間 | 約14〜15時間 |
| 食事の影響 | 食後はピークが約1.8時間遅れ、最高濃度が42%低下。効果が出るまでの時間が遅れることがある | 標準的な食事(脂肪の割合が約30%)では影響なし | 高脂肪食でも影響なし。食事の有無にかかわらず服用できる |
| 作用が続く時間 | 添付文書に時間の明記なし(半減期は短い) | 添付文書に時間の明記なし(半減期は短い) | 服用後36時間まで有効性が認められている |
- 3種類とも1日1回まで、間隔は24時間以上あけると定められています
- 高齢の方、肝臓や腎臓の働きが落ちている方、一部の抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬を使っている方は、少ない量から始める、または使えないことがあります
- どれが向いているかは、持病・併用薬・生活のパターンで変わります。上の表は薬の優劣を示すものではありません
「飲んだのに変わらなかった」というとき
ガイドラインが紹介する研究では、シルデナフィルが無効とされた例の初期の失敗の81%が、不適切な使い方(油っこい食事のあとの服用、性的刺激がない、タイミングの誤り、数回しか試していない、など)によるものでした。使い方を説明し直すと41.5〜59%で反応がみられたと報告されています。 自己判断で量を増やしたり、2種類を一緒に飲んだりせず、処方した医師に相談してください。
飲み合わせと持病の注意:硝酸薬は併用禁忌
いっしょに使えない薬
3種類すべての添付文書の「警告」の最初に書かれているのが、硝酸剤・一酸化窒素(NO)供与剤との併用禁忌です。併用すると血圧が過度に下がるおそれがあります。
- ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、亜硝酸アミル、ニコランジルなど
- 飲み薬だけでなく、舌下錠・スプレー・貼り薬も含まれます
- 「発作のときだけ使う」「念のため持っている」場合も、必ず医師に伝えてください
- 肺高血圧症の治療薬リオシグアトも、3種類すべてで併用禁忌です
ほかにも、薬ごとに併用できないお薬があります。バルデナフィルは一部の抗不整脈薬や、抗HIV薬・イトラコナゾールなど特定の薬と併用できません。シルデナフィルは飲み薬のアミオダロンと併用できません。前立腺肥大症や高血圧で使うα遮断薬、降圧薬は「併用注意」で、めまいや立ちくらみを伴う血圧低下が報告されています。 大切なのは、ED治療薬を飲んだあとに胸の痛みが出て救急を受診する場合、服用したことを必ず伝えることです。硝酸薬が使えないため、治療の選択に関わります。
心臓や血圧の病気がある人
性行為そのものが心臓に負担をかけます。添付文書では、次のような方には投与しないと定められています(薬によって細部は異なります)。
- 心血管系の病気などで、性行為が不適当と考えられる
- 脳梗塞・脳出血を最近6か月以内に起こした。心筋梗塞を最近起こした(シルデナフィル・バルデナフィルは6か月以内、タダラフィルは3か月以内)
- 低血圧(90/50mmHg未満)、または治療で管理されていない高血圧(安静時170/100mmHg超)
- 不安定狭心症(バルデナフィル・タダラフィル)
- 重度の肝機能障害、網膜色素変性症
一方でガイドラインは、心血管疾患のリスクファクターがある方でも、硝酸薬を使っておらず、心臓の状態の評価(どの程度の運動に耐えられるか、など)を受けたうえであれば、PDE5阻害薬による治療は可能と考えられるとしています。「心臓の持病があるから一律に不可」でも「だれでも飲める」でもなく、主治医の判断が必要です。
EDは生活習慣病・心血管疾患のサインになりうる
ガイドラインは、EDと心血管疾患がリスクファクター(高血圧、糖尿病、喫煙、脂質異常症など)を共有していることを指摘し、次のような報告を紹介しています。
- EDのある人は、ない人に比べて心血管イベントの相対リスクが1.47だった(欧米の研究をまとめた解析)
- 冠動脈疾患が見つかる2〜3年前に、EDを自覚していることが多い
- EDを理由に受診した人の18%に、診断されていない高血圧が見つかったという報告がある
EDがあれば必ず心臓の病気がある、という意味ではありません。ただ、健康診断をしばらく受けていない方は、EDの相談をきっかけに血圧・血糖・脂質を確認する価値があります。ガイドラインも、肥満や運動不足の解消、禁煙、生活習慣病の治療を勧めています。
服用後、すぐに受診が必要な症状
- 勃起が4時間以上続く:放置すると陰茎の組織が傷つき、勃起機能を損なうおそれがあります。直ちに受診してください
- 急に視力が落ちた、見えにくくなった:服用を中止し、すみやかに眼科へ
- 胸の痛み、強い動悸、失神:救急受診を。ED治療薬を飲んだことを伝えてください
- 急に耳が聞こえにくくなった、発疹や顔の腫れが出た
頭痛、ほてり、鼻づまり、消化不良などは、添付文書で比較的頻度の高い副作用として挙げられています。めまいや視覚の異常が出ることがあるため、運転には注意が必要とされています。
個人輸入・通販の薬をお勧めしない理由
ファイザー・バイエル薬品・日本新薬・日本イーライリリーの4社が2016年に行った合同調査では、日本語の個人輸入代行サイトなどから入手したED治療薬70検体のうち、40.0%(28検体)が偽造品でした。国内から発注した分でも35.6%が偽造品でした。成分を分析すると、有効成分が承認用量を超えているもの、不足またはまったく含まれていないもの、別の成分や不純物を含むものが確認されています。ガイドラインには、偽造品による重い低血糖の症例報告も引用されています。 厚生労働省も、個人輸入される医薬品は国内の法律に基づく品質・有効性・安全性の確認がなされておらず、偽造製品の可能性があること、健康被害が出ても医薬品副作用被害救済制度の対象にならないことを注意喚起しています。 なにより、個人輸入では硝酸薬との飲み合わせや心臓の状態を確認する人がいません。これが最も大きなリスクです。
まとめ
- EDの相談先は泌尿器科が基本。持病で通院中の方は、まず主治医(内科・循環器内科)に相談する
- 飲み薬は3種類。血中濃度が上がるまでの時間、食事の影響、作用の長さが異なり、どれが向くかは診察で決まる
- 硝酸薬(ニトログリセリン、ニコランジルなど)を使っている方は、3種類とも併用禁忌。貼り薬やスプレーも含めて必ず申告する
- EDは高血圧・糖尿病・心血管疾患のサインになりうる。血圧・血糖・脂質もあわせて確認する
- 個人輸入の薬は、約4割が偽造品だったという調査がある。救済制度の対象外でもあり、お勧めできない
当院でのご相談について
当院(渋谷駅まちかどクリニック)では、EDのご相談をお受けしています。健康保険を使わない自由診療のため、費用は全額自己負担です。建物に看板を出していない一室で、完全予約制・お一人ずつの診察です。来院が難しい日はオンライン診療でもご相談いただけます。硝酸薬をお使いの方にはED治療薬をお出しできません。心臓や血圧の状態によっては、お薬をお出しせず、循環器内科など対面の医療機関の受診をお願いする場合があります。
LINEで相談するよくある質問
EDは何科を受診すればよいですか。
専門は泌尿器科です。ただし学会のガイドラインは専門外の医師も対象に作られており、かかりつけの内科などでも相談できます。心臓や血圧の病気で通院中の方は、まずその主治医に相談するのが確実です。
ED治療薬は心臓の薬と一緒に飲めますか。
ニトログリセリンなどの硝酸薬(ニコランジルを含む)を使っている方は、3種類すべてのED治療薬が併用禁忌です。血圧が過度に下がるおそれがあるためで、貼り薬やスプレーも含めて必ず医師に伝えてください。
ED治療薬は食事のあとに飲んでも大丈夫ですか。
薬によって違います。シルデナフィルは食後に飲むと吸収が遅れ、効果が出るまでの時間が延びることがあると添付文書に記載されています。タダラフィルは食事の有無にかかわらず服用できるとされています。
通販や個人輸入のED薬は使ってもよいですか。
お勧めできません。製薬4社の2016年の調査では、インターネットで入手したED治療薬の約4割が偽造品でした。個人輸入した薬で健康被害が出ても、医薬品副作用被害救済制度の対象になりません。
ED治療薬に健康保険は使えますか。
一般的なEDの治療は保険の対象外で、全額自己負担です。例外として、勃起不全による男性不妊の治療で、定められた要件を満たす場合に限り保険が適用されます。
参考にした情報
- 2024年 福井大学医学部 卒業
- 2024年 医師免許取得
- 都内の大学病院に勤務
- 2026年 当院を開業
- 認定産業医
この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の診断や治療の指示ではありません。症状がある場合は医療機関にご相談ください。